【長編】距離
そんなある日だよ。


なにも知らないはずの修が泣いてるのを見たのは。


修は、決して泣いてる理由を言わなかった。


そんな修にどう接していいかわからなかった。


どんな言葉も修を傷つける言葉になるって思ったから。


大人は、時として子供にしかわからない傷をつけるから。


それに.....


幼くても理解するかもしれないから。


孝知ですら、困ってた。


孝知は、


『泣かないで、遊ぼうよ。』


って、言うだけだったんだけどな。


孝知なりの優しさは、修には届かなかった。


孝知の声が聞こえてないみたいだったんだ。


てか、俺らの声も聞こえてないみたいだったけどな。


そんな時だよ。


『どうして、泣いてるの?
ずっと、一緒にいるから泣かないで。』


朱菜が修の頭をなでながら言ったんだ。


修が朱菜を見て、抱きついたんだ。


『僕も行きたかったの。
どうして、連れてってくれないの?』


修は、朱菜に聞いたんだ。


『どこに行くの?』


朱菜が修に聞き返したんだ。


『お父さんたちのところだよ。』


俺たちは、ようやく気づいたんだ。
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