【長編】距離
「初めて?」


「あぁ。
好きになったのだって、告白したのだって、抱きしめたのだって。
朱菜が初めて。
これからだって、初めては朱菜がいい。」


なんて、最高の男なんだろう。


私には、もったいないほどの。


余計に、私は浅はかだよね。


「修、ありがとう。」


私は、修にお礼を言った。


「や...別に。」


修は、照れたように頭を掻いた。


「じゃあ、話すね。
私は、修になら聞いてもらいたい。
消せない過去だから。
隠し通すほどの価値もないから。」


私の想いを聞いて。


一途なフりして逃げた私。


弱かった。


この想いを突き通すには、辛かった。


だから、最低で浅はかな事をした。


だけど、この想いだけはやっぱり違って。


永遠だよ。



そう思うんだ。


そして、強く強く願ってしまうんだ。


『修も同じ気持ちでありますように』


って。
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