【長編】距離

朱菜 side

-トントンッ


「失礼します」


私は、保健室の中に入った。


「朱菜、今、先生いないよ。」


よかった。


「そうなんだ。
孝知、修は?」


「寝てる。
さっき、起きたけど、迎えが来るまで寝てるって。」

「あっそ。」


私は、小さくため息をついた。


「そういえばさ。
俺らがいなくなった後に屋上行った男がいたんだけど、知り合い?」


「へっ?
なんで?」


それは、明らかに戒の事だよね。


「その男に
『中畑 朱菜って、いた?』
って、聞いてきたから。」

「あぁー。
元彼だよ。
中1の時の。
今日、転校してきたんだ。」


私は、懐かしむように答えた。


「う〜ん。
じゃあ、初めての....」


「そうだね。
けどさ。
私、引きずってるわけじゃなかったみたい。
やり直そうって言われて、なんとも思わなかったから。」


どうしたものか。


てか、なんで孝知にこんな素直に話してるのかな?


特に聞き上手でもないのにな。


たぶん、自分が話したいんだろうな。


一人で考えるのが嫌になってきたんだ。
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