【長編】距離

朱菜 side

「やっぱ、なんかあったろ。」


保健室を出た後、しつこく聞く修。


「なにもないから。
てか、自分の心配しなさい。」


よかった。


覚えてなくて。


「わかったよ。」


修は、結局、拗ねてしまった。


そんな拗ねた顔は、かわいかったりする。


「はいはい。
拗ねないの。」


私は、そんな修に宥めるように言う。


「拗ねてねぇーし。」


恥ずかしくなったのか、微妙に頬が赤らんできた。


てか、しつこいのは、明らかに拗ねてる証拠よね。


「わかった、わかった。
修は、拗ねてないね。」


私は、こうやって修を子供扱いと言うか、甥だと意識づけるためにあやすような口調になるんだ。


そんな私を修は、悲しそうに見るんだ。


ごめんね。


わかってるよ。


なんとなくだけど。


けど、怖いんだよ。


一歩を踏み出すって勇気がいるんだよ。


修、その勇気をくれるなら、私は修の望みを叶えるよ。
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