【長編】距離
「朱菜」


「ハルくん」


私は、鏡越しにハルくんを見た。


「泣いたのか?」


ハルくんが私に近づき、顔を見た。


「お母さんから聞いたの?」



お母さんったら、おしゃべりなんだから。



「あぁ。」


当たり前に頷くハルくん。


「じゃあ、みんな....」



「俺だけに言ってきた。
母さん、勘が鋭いから。」


やっぱり、お母さんの目は誤魔化せないのね。


「ハルくんが心配するような事じゃないから、安心して。」


私は、作り笑いをした。


「昨日までは、普通だったろ?
なんで、うまく笑えてない。」


やっぱり、お兄ちゃんね。


「ハルくん。
私、わからないの。」


私は、ハルくんを縋るようにみた。


「なにが、わからない?」


ハルくんは、優しく聞き返した。


「私の気持ち。」


「朱菜が、誰を好きかは知らない。
けど、素直になるのが一番だ。
想うだけなら、いいんだぞ。」


ハルくんは、さも相手を知ってるようだった。


「うん。
ちゃんと考えて、素直になる。」


逃げちゃダメ。


ありがとう、ハルくん。
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