BAKYUNNN!!
腕時計を見る。
午前8時5分。
そろそろ行った方がよさそうだ。
もう一回桜を見上げてから、足を踏み出した。
しかし、踏みとどまってしまった。
振り向いた時に、他人が自分のことを見ていたら、結構驚くんじゃないだろうか。
私は今現在、驚いている。
一人の男性が、私のことをまっすぐ見ているのだ。
柔らかそうな黒髪が、風でふわりと揺れた。
真っすぐ私み見る青の瞳はまるで何も愛したことがないという様に、冷たさを感じさせた。
けれどその冷たさは一瞬のこと。
目の前の男性は私ににこりと笑いかけたのだ。
酷く美しい笑みを、わたしに。