*ハナコイ*


王子様はすっと立ち上がると花壇の前にたって静かにバラを見下ろしていた。



「俺も…バラみたいに自由に生きられればな…」



少し愁いを帯びた瞳でバラを見つめるとセルジュはロゼアに向き直った。



「使用人にこんな話をして悪かったね。ロゼア…今日の事は忘れてくれ」



そう言って笑う王子様の顔は、いつもの笑顔だった。



でも、何かが違う…



思わず、私は城へと向かう王子様の後ろ姿に叫んでいた。



「明日もまた来てくれますかっ?」



でも、昨日のように私が大好きな王子様の笑顔を見る事はできなかった…


王子様は全く私をみることなくお城へ帰って行った。



「王子様…」



泣きそうな私の顔を、お月様の光が優しく照らしてくれていた…
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