*ハナコイ*
王子様の姿は見えないから、足音だけを聞いていた。
「もう。セルジュ様ったら」
そう言ってふふふと笑うお姫様の声が遠ざかったのを確認すると、私はゆっくり頭を上げた。
「あの方って王子様の婚約者らしいわよ」
「聞いたわぁ。今日正式に国王様にご報告に行ったとか…」
これ以上聞きたくない…
そう思ったけど、どこへいっても王子様の結婚の話ばかり。
とてもいい事だってわかってるのに…
素直に喜べないよ。
お姫様はその日一旦自分の国に帰って行った。
噂によると、お姫様は王子様の事がすごく気に入ったらしくて少しでも一緒にいたいと結婚前なのに荷物をまとめてやって来るらしい。
お姫様が再びやってくるのは今から三日後…
私の魔法が解けて、バラに戻る日だった。