*ハナコイ*
そんな事を考えながら部屋へ戻ると、使用人が花瓶の花を変えていた。
「お帰りなさいませ」
「それ…どうしたの?」
俺がいつものように満面の笑みで微笑みかけると、使用人はぽっと頬を赤く染めて答えた。
「今日中庭から摘んだバラだそうですよ。白いバラなんて珍しいですよね」
さっきまで中庭にいたのに全く気づかなかった。
白と…赤のバラ…
「使用人が王子様とお姫様の結婚のお祝いにと摘んだそうですよ。」
「使用人…?」
「はい。バラが好きな王子様に、と」
部屋にひとりになってから、俺はずっとバラを眺めていた。
ロゼア…
確信はなかったけど、この花を摘んでくれたのはロゼアだって思った。
月に照らされて輝くバラは、今の俺には悲しい輝きに見えた…
ただひとつ。伝えられなかった思い…
ロゼア…俺は、君が…