*ハナコイ*


ロゼアとの思い出を辿りながら中庭を歩いていると、ふとベンチ下に落ちている白いバラが目に留まった。



「なぜ一本だけ…?」



不思議に思ったけど、他には何もないし…



昨日風が強かったから折れて飛ばされたんだろうか…



そんな事を考えていると、突然後ろから声をかけられた。



「あの…」



振り向くと、そこには美しい女性が立っていた。



月の光に染まったような美しい金髪のその女性は、俺に紙切れを渡してきた。



「これは?」



不思議そうな顔をする俺に、女性は笑顔で言った。



「中を見てください。美しいバラが大好きな…王子様への手紙です」



そう言って立ち去ろうとする女性に、俺はにっこり笑って言った。



「ありがとう。あなたもバラのように美しい…」



そんな俺の言葉に、女性はかすかに微笑むと城の中に消えていった。
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