Plumbago
莉乃


pipipipipipipipi―…


響きわたる電子音が終りの時間を告げる。
必要以上に大きな音を上げ鳴り続けるタイマーを切って再びベッドからソファに腰を下ろした。



「残念だな、もう時間切れ」

「そうみたいですね」



吸っていた煙草を灰皿に押し当て、財布から1万円札を抜き出すと



「ありがとう」



そう言って、それを私に差し出した。
それに躊躇することなく満面の笑みを作り、こちらこそと1万円札を受け取った。


別れる時に必ずチップをくれる山村さん。
この仕事を始めて間もない頃に出会った優良な顧客。



「今日はもう延長しないんですか?」

「寂しいかい?」

「はい…」

「月末また会いに来るよ」

「約束ですよ?」



120分のVIPコースに加え延長2時間。

今日はちょっと、長かったな。


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