俺は見ない
だが、俺は気に入った。
だって可愛いじゃないか、こんなギャップ。
次の駅につき、怒って降りようとするその少女の手を掴み、俺も降りる。
一目惚れ。そんな言葉、信じていなかったが、いままさに、俺は一目惚れした。
人の少ない駅で2人だけ。腕をつかまれた少女と掴んでいる俺。
「なあ、俺と付き合わない?」
告白してきたのに、いまは怒っている少女に、今度は俺が告白した。
少女は、憮然とした表情のまま頷いた。
そして‥「嬉しい」
たった一言いい、ふわりと笑った。
こうして、俺と少女は付き合いはじめた。名前も年も知らない、そこから始まった恋。俺の初めての彼女だってこと、まだ少女は知らない。