俺は見ない
「まあまあ、昴さん、いらっしゃい。桂子、もう少ししたら帰ってきますからね」
彼女の家族は温かい。頼りがいある父、綺麗な母、ちょっと生意気だけど可愛い弟、の4人家族の橘家。
単なる彼氏の昴にも温かく優しく接してくれる。
洗練された庭付き一軒家。父親は確かどこかの役員をしていると聞いた。まさに理想の家族。
お母様の薦めでしばらくリビングでくつろいでいたら『ピンポーン♪』
ドアベルがなり、台所にいたお母様がエプロンで濡れた手を吹きながら「多分桂子ね」と、笑顔で迎えにいく。
「おかえりなさい♪」
「「ただいま」」
重なりあった2つの声。ひとつは愛する桂子、そしてもうひとつは多分お父様。
「あら2人いっしょになったのね?」とお父様の鞄を手にしたお母様が2人をひきつれて戻ってきた。
「そうなの。電車でね〜あっ昴!もー来てるなら、ママ先に言ってよ」
と、途中俺に気づいた途端、駆け寄ってくる。
桂子の後ろにいたお父様も「お!いらっしゃい。」
と笑顔だ。