バスルーム
~君の魔法が解ける時間~
それじゃあ,お言葉に甘えて帰るとしよう。
あたしはメイクコスメの入ったバッグをもって,玄関扉をあけようとした。
『待って』
あたしはくるっと後ろを向かされて,ジュンの腕の中にすっぽり収まった。
『ほぇ…?』
ジュンは間抜けな声を出したあたしの体をぎゅっと抱きしめて,しばらくはなしてくれなかった。
そのまま数分がすぎて,ジュンは黙ったままあたしの肩をもって,そっと放してくれた。
『ごめん…。俺まだ熱あんのかも。』
『はは…そうみたいだね。早く治さなきゃね。』
『明日さぁ,学校終わったらうち寄ってくれない?』
ジュンはいつの間にか背を向けていた。
一応病人だし,心細いのかなぁ。
『いいよ。夕方になるけど,それでよければ。』
あたしは笑って答えた。
『うん。お願い。もう夜なのに送ってやれなくてごめんな。』
『気にしないで。うち結構近いし。』
『今日はいろいろごめん。』
そう言い残して,ジュンはベッドの方へと歩いて行った。