バスルーム
~君の魔法が解ける時間~
『ねぇ,すっぴん見せてよ。』
ジュンが思い出した!と言わんばかりに,目をきらきらさせてあたしの頬を両手でむにっとはさんだ。
『らめらよぉ~』
手で挟まれて口が動かない。
それに今日は汗かくと思ってウォータープルーフ。
メイク落とすにはクレンジングオイル相当使わないと無理。
『お風呂入るときと寝るときしか落としてないもん。あたしブサイクだし。人様には見せられません。』
あたしはふぃっとそっぽを向いた。
『ジュンみたいに生まれつき顔がいい人に,あたしみたいなブスの気持ちがわかるわけないし。』
『だから前かわいいって言ったじゃん。あれお世辞だと思ってんの?』
『当たり前。お世辞以外にかわいいとか言われたことないし。』
そうだ。
あたしジュンにキスされてからなんか勘違いしてた。
あたしのかわいさはただの作り物で,本物のあたしは根っからの薄顔ブス。
ジュンのこと好きになったかと思ったけど,もともとあたしなんかが恋なんてできるわけない。
すっぴん見せる恋なんてしたくもない。