バスルーム
~君の魔法が解ける時間~
『ちなは誰かにメイクしてあげてるとき,すげー生き生きしてる。そういうちなのこと,いいなとか好きだって思うやつ,いっぱいいると思う…』
この人お世辞ヘタだ。
『そんなお世辞じゃ,あたしのこと好きみたいに聞こえるよ。』
あたしは冷めた声で言った。
あたしはジュンを見てなかったけど,たぶんもう何も言わないだろうなと思った。
あたし,顔だけじゃなくて性格もブスになったんだな。
前はメイクのお世辞も素直に受け取ってたのに。
なんでこんなモヤモヤするんだろ。
『…だよ。』
ジュンを見ると,下をむいてブツブツ呟いている。
『好きだよ。』
へ?
好き?
『なにが?』
『ボケんなよ。ちなが好きだって言ってんの。』
冗談やめてよ。
笑っちゃうじゃん。
『何笑ってんだよ?そんな嬉しいの?』
見るとジュンが背中を丸くして,上目遣いでニヤニヤしてる。