バスルーム
~君の魔法が解ける時間~
並んであるいてると親子みたいなのかな。
そんなことないか。
あたしメイクしてるし。
『なんか言った…?』
ジュンがダルそうに振り向いた。
『ううん!なにも!』
あたしは胸のあたりで手をブンブン振った。
ジュンの顔が一瞬こわばったかと思うと,口の端の力が抜けて,ふっと笑った。
あ…───
笑った顔初めて見たかも。
ジュンの売りはキリッとつり上がったクールな目だから,撮影で笑顔を求められることはめったにない。
あったとしても,こんな自然な笑顔はたぶん初めて。