私にとって唯一の人
場所は桜の木の下。
1年前の入学式、始めて健司と話した場所。
桜が恋に落ちた場所。

新学期直後の今日は昼までで帰れる日。放送はいつもと同じように昼休みの合図の鐘を鳴らす。

『ボーン、ボーン』
そしてこれが告白の合図。
クラスの数人が、それぞれの場所でそれぞれの相手に告白を始める合図。

「あの‥橘 健司君、私、あなたのことが大好きです!付き合ってください!」
桜は意を決して一気に言った。謝罪するかのごとく、深く頭を下げ、目をつぶる。

「えっと‥」
ごめん。そう続くことを覚悟して桜は、スカートの端を握りしめる。

「はい。」

はい!?健司の呟いた、たった一言を桜は繰り返し考えた。
はいはYES?ノー?
桜は困惑して、押し黙る。そんな桜の顔を自然に上げさせ、まだ悩んだ表情をしている桜の顔に、黙って健司は顔を近づけた。
< 3 / 14 >

この作品をシェア

pagetop