オレンジの教室
心臓がドクドクうるさかった。
まるで、50メートルを全力で走った後のようなくらい、鼓動は早かった。
それから、早川はハッと、思い出したかのように、また焦った表情を見せる。
「あの、えっと…、蔵木くんの席、勝手に座っちゃってごめんなさい! ひ、日当たりがよかったから、つい寝ちゃって…」
あまりのテンパり具合に、つい笑ってしまった。
「え? えっ…、な、何で笑うの!?」
早川は不思議そうに聞いてきた。
その表情でさえ、心臓のドキドキの一部に変わってしまう。
これは思ったよりも重症だ。
「早川さんのテンパり具合が、おもしろいよ。」
素直にそう言うと、早川は表情が柔らかくなり、目を細めて笑った。
「蔵木くんの笑った顔も、すっごくいいと思う。」
その言葉、それから、早川の笑顔が、なんだかすごくで可愛くて、愛しい。
ただ、純粋にそう思った。