オレンジの教室



心臓がドクドクうるさかった。


まるで、50メートルを全力で走った後のようなくらい、鼓動は早かった。









それから、早川はハッと、思い出したかのように、また焦った表情を見せる。


「あの、えっと…、蔵木くんの席、勝手に座っちゃってごめんなさい! ひ、日当たりがよかったから、つい寝ちゃって…」


あまりのテンパり具合に、つい笑ってしまった。




「え? えっ…、な、何で笑うの!?」


早川は不思議そうに聞いてきた。


その表情でさえ、心臓のドキドキの一部に変わってしまう。



これは思ったよりも重症だ。






「早川さんのテンパり具合が、おもしろいよ。」


素直にそう言うと、早川は表情が柔らかくなり、目を細めて笑った。




「蔵木くんの笑った顔も、すっごくいいと思う。」



その言葉、それから、早川の笑顔が、なんだかすごくで可愛くて、愛しい。


ただ、純粋にそう思った。





< 15 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop