オレンジの教室
「えっと、はい。」
早川はポケットに手を突っ込み、小さなキャラメルを取り出した。
「あの、蔵木くんの席、かってに使ってごめんね。」
キャラメルは彼女なりのお礼なのだろう。
俺の身長が高いせいか、早川が低いせいか、早川は俺を見上げるようにして、そう言った。
不覚にも、その姿が可愛く思え、必死に表情に出さないようにするのについ、「べつに」と、ぶっきらぼうに答えてしまった。
ほんと、自分が不甲斐ない。
今日はどうやら、反省点だらけだ。
だけど、悪い気はしなかった。
「じゃあ、またね。」
一度、彼女は笑顔を見せて、教室を出ていった。
「またな」
一人になった教室で、俺は言った。
また、話せるだろうか。
もし、もう一度チャンスがあるのなら、今度もっと話したい。
そしたら、もっともっと、彼女のことを好きになるのだろう。
口に含んだキャラメルが、甘くて、香ばしくて、なんだか心地よかった。
fin.