*逢風*
広く綺麗な廊下には、多くの女中やお手伝いの男たちが行き来していた。
「仕事の邪魔にならない様に端を歩けよ。」
お膳を両手で持ち、早足で歩く女中達が葉月の姿を見ると、軽く頭を下げ横を通り過ぎて行く。
宿屋は活気に満ち溢れていた。
「凄い、ですね…。皆忙しそう。」
「あぁ、今の季節は旅客が一番多いからな。皆忙しいんだよ。」
広い廊下をしばらく歩くと、玄関近くなのか一段と人が多く旅客らしき姿も見えた。
そして、玄関から見えない所に二階へと続く階段があった。葉月と花音はその階段をのぼり、二階の一番奥にある部屋の襖の前に着いた。
(緊張する―。どんな人だろう…)
こんなに大きな店を切り盛りしている主人だ―きっと凄く厳しい人達だろうと思い、花音は緊張し、手に汗をかいた。
「緊張なんてしなくていぃ花音が想像してる様な人じゃない。」
緊張の為にひきつった顔を見て思ったのだろう―。
「入るぞ、親父」
「あぁ、葉月か入れ」
襖の向こうからは、優しげな声が聞こえてきた。
「仕事の邪魔にならない様に端を歩けよ。」
お膳を両手で持ち、早足で歩く女中達が葉月の姿を見ると、軽く頭を下げ横を通り過ぎて行く。
宿屋は活気に満ち溢れていた。
「凄い、ですね…。皆忙しそう。」
「あぁ、今の季節は旅客が一番多いからな。皆忙しいんだよ。」
広い廊下をしばらく歩くと、玄関近くなのか一段と人が多く旅客らしき姿も見えた。
そして、玄関から見えない所に二階へと続く階段があった。葉月と花音はその階段をのぼり、二階の一番奥にある部屋の襖の前に着いた。
(緊張する―。どんな人だろう…)
こんなに大きな店を切り盛りしている主人だ―きっと凄く厳しい人達だろうと思い、花音は緊張し、手に汗をかいた。
「緊張なんてしなくていぃ花音が想像してる様な人じゃない。」
緊張の為にひきつった顔を見て思ったのだろう―。
「入るぞ、親父」
「あぁ、葉月か入れ」
襖の向こうからは、優しげな声が聞こえてきた。