大人の女と男の関係
受話器を置き、通話時間を確認する。


約15分。


今日は短かった方だ。


「香菜さん、すみません。
私、どうしてもあの人だめで。
大丈夫でした?」


顔を上げると、千佳ちゃんと一緒に様子をうかがっていたらしい課長もこっちを見ていた。


私は二人に向かって頷いて見せた。


「また、いつもの愚痴。
不景気でイライラしてるんだと思う。
まあ、営業の田倉君の態度もよくなかったみたいだけどね。
あとで、ひとこと言っておくわ」


私はこの小沢社長との付き合いももう6年になるので、愚痴を聞いてやりさえすれば治まるのを知っている。


どこにもやりようのない怒りを誰かに聞いて欲しいだけなのだ。


きっと小沢社長も言ってもどうしようもないことはわかってる。


世の中不景気なんだから、どこもギリギリで大変なのだ。


うちも例外じゃない。
< 17 / 304 >

この作品をシェア

pagetop