大人の女と男の関係
「あのさ、私、もうここで帰っちゃだめかな?」


私が囁くと、千佳ちゃんは私の腕にすがりついて囁き返してきた。


「えー、もう1軒行きましょうよ~」


「いや、ほら、二人とも私よりずっと若いし、私はもうこの辺でいいかなって」


「だめだめ!
せっかくの出会いの場なんですから、香菜さんも……」


と、そこまで言って千佳ちゃんは急に顔を上げた。


前方を見つめている。


「なに?」


気になって私も千佳ちゃんの視線を追いかけた。


「あれ、成哉さんじゃないですか?」


千佳ちゃんが言い終える前に、私もその姿を見つけた。


少し先から、成哉が同年輩の男性と並んでこちらに向かって歩いてきていた。


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