大人の女と男の関係
10.価値観の相違と拒絶

「まださっきの人たちと一緒だったんじゃないの?」


私が駆けつけると、成哉は聞いてきた。


「うん。
カラオケ行ってた。
あのさ、あの人たちなんだけど、取引業者さんでね、千佳ちゃんが営業さんを気に入って、どうしてもって言われて飲みに付き合っただけだから」


ハアハアと息を切らしながら私は一気に言った。

駅の階段を駆け上がり、すっかり息があがっていた。

うー、運動不足実感。


そんな私を見て、成哉は苦笑した。


「そっか。
さっきは俺も会社の先輩と一緒だったから声かけられなくて……
抜けてきちゃってよかったの?」


肩で息をしながら、改めて成哉の顔を見上げた。


よかった、機嫌悪くはなさそう。


「いいの、いいの。
それより、成哉おなかすいてるでしょ?
もうホーム入っちゃったし、このまま電車で新宿に出て、どこかで食事しようよ」


私が提案すると、成哉は「ああ、いいよ」と了解してくれた。


よかった。


成哉と向き合ってちゃんと話せることにほっとした。



< 178 / 304 >

この作品をシェア

pagetop