大人の女と男の関係
「仕方ないから、彼の借金のことですって、事情を話したの。
念のため、明細書も持って行っていたから、それも見せて。
それ以前に200万の借金があって、それを私が返済したことも話したわ」


「それで?」


「最初、お父様は信じなかった。
飲み食いするだけで、そんな大金になるわけないって。
ブランド品でも買い漁らなきゃそんなにならないだろうっておっしゃって、私が借金を作ったんじゃないのかと疑われて」


「ええーっ」


「私、必死に説明したわ。
私も働いてるから、自分の物は自分の給料から買ってますって。
それに、借金の名義は彼の名前だっていうのも見せて。
それで、なんとか借金は彼が作ったことを認めてくれたんだけど、今度は、財布のひもをしっかり握ってなかった私が悪いって言い出して。
家計は女房がやりくりするのがあたりまえ、夫の借金にそこまで気付かないなんて嫁失格だって」


「ええーー!?」


私達の前にはパスタが運ばれてきたけれど、私も千佳ちゃんも手をつける気にならなかった。


「そしたらそれまで黙っていたうちの母が、本人がいないところで話しても仕方ないから日を改めましょうって言い出して、その日は帰ることにしたの」


「お母様、冷静ですねー
もし私だったら、娘がそんなふうに言われたらキレちゃいますよぉ」


千佳ちゃんの憤慨した顔を見て、私はあの日の母を思い出し微笑んだ。


「あちらの家を出てすぐに激怒してたわよ。
父になんて、さっさと離婚しちまえって、言われた。
私も彼が来なかったことにものすごく腹を立ててたから、そのとき初めて離婚を考えたわ」

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