大人の女と男の関係
何のCDだろうと考えながら取り出してみると、それはCDではなくDVDだった。


タイトルを見て、私の体に衝撃が走った。


「あっ、これっ!」



それは、私の大好きな後藤陽司の所属する劇団の舞台を収録したものだった。


かつて、この同じ場所で成哉と演劇について熱く語り合った日のことが思い出された。



「もしかしたら香菜さん持ってるかもと思ったんだけど……」


そう言う成哉に首を振った。


「ううん、持ってない。
すごい懐かしい!
えー、ちょっと、どうしよう。
すっごい嬉しい!!」


DVDの表面や裏側をじっくり眺め、かつて熱狂した舞台のあらすじや共演者の名前を確認するにつけて心が沸き立った。


今ではもうすっかり演劇を見に行くことのない生活を送っているけれど、舞台は私の青春を象徴するものだった。


学生時代に何度も行った小劇場、そしてさらに、成哉と飲みながら語り合った日々。


その両方を思い出させるDVDに、私は興奮を止めることができなかった。
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