大人の女と男の関係
胸に感じる痛みの正体はわかっていたけれど、あえて無視した。


私はまた窓の外に視線を向けた。



次の駅も、更にその次の駅も乗り降りする人は少なく、私と成哉は離れたままだった。


成哉の前には相変わらず女の子がいた。



私の降りる一つ手前の駅は、別の路線との乗換駅だ。


そこでは多くの人々が降りた。


それでやっと、動けるスペースができた。


しかし、私は動かなかった。


成哉の方はすぐに私のそばに来た。


成哉の後ろにはさっきの女の子がついてきていた。


あれ?成哉、気づいてない?


女の子を後ろに連れた成哉が近づいてくるのを見て私が固まっていると、成哉は当然のように、また私の背中に腕を回した。


私が顔を上げて成哉を見ると、成哉は体をかがめて私の耳元に口を近づけ「大丈夫だった?」と囁いた。


私は耳に当たった成哉の吐息のくすぐったさに思わず身を縮めた。


そして、成哉の目は見ずに小さく頷き返した。
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