大人の女と男の関係

成哉――



この写真、ここにあったんだ。



その写真の存在は覚えていた。


何度も飽きることなく見つめたから、構図も、光の加減も、成哉の表情も、全部覚えていた。


ただ、どこにしまったのかだけ忘れていて、


久しぶりに、唐突に出てきたそれに、少したじろいだ。



「香菜さん?」


千佳ちゃんに顔を覗き込まれ、物思いから覚めた。


「ああ、いや、友達。
昔よく一緒に飲みに行ってた男友達よ」


「へえ、こんないい男なのに付き合わなかったんですか?」


千佳ちゃいるんはまじまじと写真を見て言った。


たしかにね。


でも、


「彼には彼女がいたから」


「あ、そっかあ。
周りの女がほっとかないかあ」


そう。


一言で言ってしまえばそういうこと。
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