大人の女と男の関係
「それならまだマシ。
なんと、印刷する前にサーバ上のファイル消しちゃったのよ。
しかも、それを黙ってるの。
失敗したなら、『申し訳ありません、間違えて削除してしまいました』ってすぐに謝ってくればいいじゃない?
こっちだって、そんなこともあろうかと、ちゃんと自分のPCとCDにバックアップとってあるんだから。
それなのに黙ってたのよ、あいつ、午前中ずーっと!」


摩耶さんは綺麗にラインを引いた眉をひそめた。


「いつ気づいたの?」


「11時になってもできたって言ってこないから、おかしいなと思ってこっちから声かけたら、『消しちゃいました』って」


「朝一って9時でしょ?
11時までその子何してたの?」


「でしょ?
そう思うでしょ?
だから私も聞いたの、今まで何してたのって。
そしたら、だまーってるの。
なーんにも言わないのよ。
ありえないでしょう?」


私が憤慨してそう吐き出すと、摩耶さんはあきれた表情で笑い出した。


「面白い職場ね、いつ聞いても」


私はうんざりしてテーブルに突っ伏した。


「もう笑い事じゃないんだって。
ほんと、勘弁してよって感じ」


そんな私を見て、摩耶さんは冷えたコロナ・ビールを出してくれた。
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