大人の女と男の関係
私が仕事でへこんだときの最初の１杯はいつもこれ。


瓶にライムを押し込み、喉を鳴らして一気に半分ほど流し込む。


「ふうーっ、生き返る！」


普通のビールは苦くておいしいと思えない私が唯一飲めるビールがこれ。


新橋あたりでは、今日の会議で部長にやり込められていた上司が同じようにビールをあおっているかもしれない。


「あーあ、だめよ、そんな飲み方したら。
軽くつまんでからにしないと悪酔いするわ。
香菜ちゃん、そんなに強い方じゃないんだから」


摩耶さんにたしなめられ、私はカウンターの隅に置いてあるメニューを眺めた。


「はーい。
じゃあ、じゃこサラダとまんまるコロッケお願い」


「はい、かしこまりました」


私のオーダーを聞くと、摩耶さんはいったん奥に消えた。


摩耶さんに愚痴ったら、少しは気が晴れた。


私はお通しをつまもうと箸を手に取った。


すると、２つ離れた右の席で俯いたままクスクス笑っている若い男に声をかけられた。


「おねーさんも大変ですね」




それが、成哉だった。




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