恋愛物語。

家に着くと、真っ先に母、麻理子の声が耳をつき抜ける。

「圭吾!ただいまくらい言いなさいっていつも言ってるでしょう?」

そう言われて、

「...ただいま。」

と、小さな声で言葉を返す。

これも日課だった。


そして自分の部屋に入るなりベッドに倒れこみ、

「...やっと終わった。」
と一言吐き捨てるように呟くのだ。

そう口にすることで、何が変わるわけでもないが、言葉にしなければやってられなかった。

何よりこのような憂鬱な生活が明日からもまた続くことを理解していた僕にとって、そうすることが今できる精一杯の慰めだった。



それから一週間、僕は同じような毎日を繰り返した。

それはまるで、見飽きたDVDを何度も再生しているような、単調でつまらない日々だった。
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