そして秘密の時間(とき)を共に
一瞬の出来事だった。



「美雪」



小声で私の名前を愛おしそうに呼び、頭の上にあった手を首の後ろに回し、私の頭だけ自分の胸に抱き寄せて、一瞬ギュッとしてから、すぐに手を離した。



「じゃぁ、早く戻れよ? 伊藤と佐伯が心配してたぞ?」

いつものみんなに見せる笑顔でそう言うと、涼は片手を軽く上げて、戻って行った。

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