ことばにできない
実際私の目には、エミちゃんは店長会いたさに店に来るとしか映らなかったし、店長は店長で、エミちゃんをかわいがっていることを、隠そうともしなかった。

エミちゃんが半時間くらいお喋りをして、店を出ると、店長は必ず、私に言い訳した。

「笑子は妹みたいなモンだ。アイツのアニキとは、長い付き合いだからな」


エミちゃんのお兄さんとは、物心着いた頃からの友だちで、お互いの家をしょっちゅう行き来していた。
だからエミちゃんとも、兄妹のように付き合ってきたって。


それは本当だとしても、この歳になって兄妹ごっこでもないだろう。

エミちゃんと店長は、何度も夜に出掛けた。

翌日店長は必ず、私に言い訳した。

「笑子のアニキのライブに、連れて行ってやったんだよ」


いちいち私にそんな言い訳しなくたって……
そんなに仲良いんだもの、近い将来二人はくっつくんでしょ、隠す必要ないのに。




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