ことばにできない
大家さんの話は続いた。
「昔なじみの気安さもあって、半年くらいならって、保証人も立てずに部屋を貸したの。
でも、相手の方が訪ねてきたことは、私が知る限り一度もなかったわ。
佳子ちゃんは、最初はしばらくは何もせずに暮らしていたけど、
そのうちスーパーで働くようになって、
いつの間にか夜のお仕事になって、
自分でも相当飲むようになっちゃって…
その頃にはあなたも大分大きくなってたから、私が説明するまでもないわね。
あとで考えてみると、あのとき聞かされた話は半分以上、佳子ちゃんの作り話だったかもしれない。
だって、本当に相手の方と約束が出来ているなら、佳子ちゃんが一人で部屋探しするなんて、おかしいでしょ?