ことばにできない
涙があふれた。

夫は微笑みながら、私の顔を見た。

「名前、何が良いかな。お前、考えてた名前とか、ある?」



その時に頭に浮かんだのは、あの夜の看護師さんの名前。

「……薫」


「かおる、かぁ。良いな、今の季節にもピッタリだ」

夫は顔をクシャクシャにして笑った。その目に涙が浮かんでいた。

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