ことばにできない

しばらくして母は「病気で働けない」という証明書を、怪しげな医者にもらった。
私たちは生活保護を受けることになった。

支給される生活保護費からアパートの家賃を引いた額の殆どは、母と男の酒代になった。
金はいつも、次の支給日の遙か手前で底をついた。

金がなくなると母も男も不機嫌になり、大した理由もなく私に当たり散らした。

男に殴られ蹴られ、母には「アンタがいるから金がかかる」と罵られ、私は暗い顔をして汚い制服を着て学校へ行った。

私に近寄ったり、声を掛けるクラスメートはいなかった。

男子は露骨に「クサイ！」と鼻をつまんだ。

担任は一度家庭訪問に来た後、見て見ぬ振りを決め込んでいた。




男は全く働かないくせに「俺がその気になれば相当稼げる」と豪語した。
一瞬だけそういう場面もみせた。