ことばにできない
たぶんギャンブルがたまたま当たったのだろう。

男は、まるで自分が私たち母子を養っているかのように、札びらを見せびらかした。

頭に来た私は隙を見て、札束から何枚か抜き取ってやった。

すぐさまバレた。
ソイツは、酔っぱらっても金の勘定だけは正確に出来るらしい。

私は死ぬほど殴られたり蹴られたりした。

翌日は痣だらけの顔で学校へ行った。
教師もクラスメートも何も言わなかった。

数日後のある夜、母と男は連れだって出かけ、深夜、男だけが一人で戻ってきた。

部屋の一番奥で、私は布団に入っていた。

ソイツはまっすぐ私のそばに来ると、いきなり布団を引き剥がし、酒臭い息を吹きかけながら襲いかかってきた。

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