ことばにできない
補導されないように注意深く夜を過ごし、夜が明けると駅近くへ行って人混みに紛れた。
ショッピングセンターの開店を待って、洋服一式買った。
トイレで着替えてから、男のメモにあった医者を探した。
年寄りの看護師が無遠慮な視線で、私を上から下までジロジロ見た挙げ句、
「支払いは前金なんだけど、大丈夫?」
と言った。
医者はもっと年寄りだった。
黙って仕事を済ませて、黙って出て行った。
身支度を済ませた私がフラッと座り込んだら、看護師が隅のベッドを指さした。
「あそこで横になってていいわよ。
楽になったら、勝手に帰ってちょうだい。
支払い済んでるから、もういいわ」
「モウイイ」ッテナンダヨ……
私はベッドに突っ伏して、ひとしきり泣いた。そして、覚悟を決めた。
親に命令されて体を売るくらいなら、自分だけのために、やろう。
この街ではダメだ。すぐに見つかる。
東京へ行こう。
東京の、なるべく若い子が多い街へ行って、身を隠そう。
* * *
ショッピングセンターの開店を待って、洋服一式買った。
トイレで着替えてから、男のメモにあった医者を探した。
年寄りの看護師が無遠慮な視線で、私を上から下までジロジロ見た挙げ句、
「支払いは前金なんだけど、大丈夫?」
と言った。
医者はもっと年寄りだった。
黙って仕事を済ませて、黙って出て行った。
身支度を済ませた私がフラッと座り込んだら、看護師が隅のベッドを指さした。
「あそこで横になってていいわよ。
楽になったら、勝手に帰ってちょうだい。
支払い済んでるから、もういいわ」
「モウイイ」ッテナンダヨ……
私はベッドに突っ伏して、ひとしきり泣いた。そして、覚悟を決めた。
親に命令されて体を売るくらいなら、自分だけのために、やろう。
この街ではダメだ。すぐに見つかる。
東京へ行こう。
東京の、なるべく若い子が多い街へ行って、身を隠そう。
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