ことばにできない
夜が明け、通勤の人並みが窓の外を通り過ぎていった。
その波が退いた頃、私は立ち上がった。
頭痛がして、体がだるかった。
熱があるみたいだった。
風邪薬を買おうと思ってドラッグストアへ行った。
薬剤師はいろいろ体調を聞いた挙げ句に、
「受診された方が良いと思います」と言った。
受診って…保険証がいるよね?
「家に帰って、保険証をとってこよう」
不意にこんな考えが浮かんだ。
二年前に出てきた街へ向かうために電車に乗った。
座席に座った途端、私はずっしりと疲れを感じた。
* * *