ことばにできない
大家さんに付き添われて、私は中学へ行ってみた。
中三の時の担任も校長も、すでに異動になっていた。
私を知る教職員はいなかった。
胸に「事務長」の札をつけた人が、一冊の資料を調べた。
「なるほど、出席日数は足りてるわけだ」
その人は私の保険証とその資料をしっかり照らし合わせた。
そして、別の部屋へ行き、戻ってきた。
その手には私の卒業証書があった。
「本来なら校長室で、校長先生から手渡してもらうんですけど」
そう言って、事務長は私の前で卒業証書を広げ、名前を指さした。
「間違いありませんね」
頷きながら、私は胸が熱くなった。
「ご事情があったのでしょう。
苦労されたのかな。
無事にご本人に渡せて、良かった」
私の顔をまっすぐに見て、そう言ってくれる。
事務長の温厚そうな微笑みを見て、涙が出た。
ケースに入れられた卒業証書…
学校に良い思い出はなかった。
担任のことは大嫌いだった。
でも、この事務長に、私は今、救われた。
生まれて初めて私は、感謝の気持ちを持った。
事務長と、ここに連れてきてくれた大家さん。
二人の存在を、心の底からありがたく思った。
中三の時の担任も校長も、すでに異動になっていた。
私を知る教職員はいなかった。
胸に「事務長」の札をつけた人が、一冊の資料を調べた。
「なるほど、出席日数は足りてるわけだ」
その人は私の保険証とその資料をしっかり照らし合わせた。
そして、別の部屋へ行き、戻ってきた。
その手には私の卒業証書があった。
「本来なら校長室で、校長先生から手渡してもらうんですけど」
そう言って、事務長は私の前で卒業証書を広げ、名前を指さした。
「間違いありませんね」
頷きながら、私は胸が熱くなった。
「ご事情があったのでしょう。
苦労されたのかな。
無事にご本人に渡せて、良かった」
私の顔をまっすぐに見て、そう言ってくれる。
事務長の温厚そうな微笑みを見て、涙が出た。
ケースに入れられた卒業証書…
学校に良い思い出はなかった。
担任のことは大嫌いだった。
でも、この事務長に、私は今、救われた。
生まれて初めて私は、感謝の気持ちを持った。
事務長と、ここに連れてきてくれた大家さん。
二人の存在を、心の底からありがたく思った。