ことばにできない
自分の過去がこんな形でさらけ出されてしまった。

あの恐怖の日々の記憶が次々に呼び起こされる。

私はパニックに陥った。

体が震え、歯がカチカチと鳴った。


「どうしたの?」

ちょっと年上の姉御肌の人が、私の様子に気づいて寄ってきた。

そして、ビデオケースを見て、息をのんだ。

「違うよね、似てるだけだよね」

その人は励ますように語りかけてくれる。
私は喋ろうとして息が出来なくなり、座り込んだ。


きっかけを作った女の子二人が、うろたえていた。

「ゴメン、まさか、こんなことって…」

「よく似てるって思っただけなのに…」

二人は口々に言い訳した。

「お願い、許して」
 と言われても、私は声も出せない。

二人は困り果てて、泣き出してしまった。

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