ことばにできない
気がつくと私は、駅前をさまよっていた。

周りがみんな私の正体を知っているような気がした。

なるべくうつむいて、髪の毛で顔を隠して歩いた。

終電を過ぎたこの時間にも、駅周辺では大勢の人間がうろついていた。

何人かの男に声をかけられたが無視して、コンビニに入った。
 
ヘアダイと化粧品を買って、駅のトイレで髪を染め、厚く化粧した。
ファストフード店の窓際の席で、オレンジジュースを飲んだ。


あの男から逃げ出したときと同じだ。




あのレンタルビデオ屋へは、二度と行けない。

自分を傷つけ、彼女たちをも傷つけた。
自分の過去が恨めしい。

一度堕ちた私は、生涯、惨めな生活を続けるしかないのだ。

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