ことばにできない
私は勝手に、その子は恵まれた家庭のお嬢様だと決めつけた。
(いい気味……あの子、今まで恵まれすぎてたんだよ)
幼い頭で、私はそんな身勝手な理屈をこねた。
─ あの子の父親、大酒飲みに激変しちゃった。
─ あの子の家、一気に壊れちゃった。
不幸に襲われたその子の顔を、見てやりたくなった。
(落ちこんで暗い顔をしているに違いない)
歪んだ期待を抱いて、ある朝、その子を待って外に出た。