遠距離、恋愛。-二人の距離-
うれしくて、改札を抜けてきたトモに笑いかけたけど、ふと隣に視線を移すと同じ会社の大野さんで。

「・・・大野さん?」

「よぉ、中野ジャン。どした?」

俺とトモの顔を見ながら、知り合い?とばかりに不思議そうな顔をしていて。

でもそれはきっと、大野さんに限ったことではなくて、俺の顔にも疑問符が浮かんでいると思う。

「トモ、大野さんと知り合いだったの?」

目の前にいるトモに問いかけると、まさか!と大きく首を横に振っていて。

そんなに激しく否定しなくてもいいんじゃないの?と思い、大野さんを見るとやはり苦笑していた。

「なに、彼女コウタのお連れさんだったわけ?」

「え?ああ、そうです。ここで待ち合わせ」

出張帰りの大野さんと、たまたま隣の席になって。

降りる駅が同じだったので、一緒に来たのだという。

大野さんは電車の中でナンパするのが好きなんだろうか。

確か、今付き合っている彼女とも出会いは電車の中だったはず。

そんな話を聞いていたことを思い出し、トモの視線を感じつつも話し込んでしまった。

「かわいいね、彼女」

大野さんがトモを見てにっこり笑っていて。

そんなことを突然言われたトモも、どうしたらいいのかわからずに顔を赤くして俺を見てきて。

俺も、今ここで何も言えずに笑うしかなかった。
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