遠距離、恋愛。-二人の距離-
「どうぞ」

「え、ありがとう、ございます」

知らない人に鞄を触られるのがこんなに気持ち悪いんだって思わなかった。

彼にしてみれば親切のつもりだろうけど、赤の他人の荷物を勝手に触るのはどうなの?

にこにこ笑う彼に、ひきつった顔でお礼を言ったけど気にする様子もなく。

私の考えすぎなんだろうか?

次で降りるって言ったから、きっと純粋に親切にしてくれたんだと素直に受け取ろう。


「お仕事帰りですか?」


私に鞄を渡しながら、話しかけてくるサラリーマン。

えー。もういいじゃん、知らない人と話したくないですけど。

新幹線は、在来線に比べてこうやって知らない人に話しかけられる率が高くなるような気がする。

乗車客のほとんどが長時間乗っているからだろうか?


「いえ・・・」


本気でこれ以上話したくない私は笑ってごまかすけど、それでも興味深々といった感じで。

困った。非常に困った。

時々よっぱらいのおじさんにからまれることはあるけど、まさかこんなに若くて(私より少し上くらい?)かっこいい人にからまれるとは!!!

幾らイケメンでも、本当に困るんですけど。


「俺は出張の帰りだったんです」

「はぁ・・・」
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