遠距離、恋愛。-二人の距離-
相変わらずにこにこしているサラリーマンは、私を見ないで自分の荷物をまとめながらも話しを続けていた。

なんだ、自分のことが話したかっただけ???

サラリーマンは自分の荷物を棚から下ろすと、すとんと座席に座りなおして再び私に笑いかける。

笑顔が素敵なのはわかったから、もう私に構わないでよ…。

ひきつった笑顔を返してから窓の外に視線を逃がす。

もうすぐ、駅に着く。

窓際に座っているために、彼が動かないと私も席から出ることもできなくて。

駅についたらさっさと降りてしまおう。改札を出ればコウタが待っているはず。

そんなことを思いながら、しつこく話しかけてくるサラリーマンに適当に相槌をしつつ、駅はまだかと外ばかり見ていた。

駅に着くまで続いたサラリーマンの他愛ない話は、面白いわけでもなく、かといって聞くに堪えるものでもなかったので、そのままなんとなく続いたんだけど。


「それじゃ行きましょうか」


なんてまるで連れ合っているかのような言い方されて、めまいがしてくる。

何を考えているんだろう?

この人、大丈夫だろうか???
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