遠距離、恋愛。-二人の距離-
ゲートから出てきた彼の姿を見つけて、大きく手を振ると俺を見つけた彼も大きく手を振りながらスーツケースを押して歩いてきてくれた。

一通り挨拶を交わし、今日の予定を話すと、とても楽しみにしていたと言ってくれて。

日本の昔からの文化にとても興味を持っているリチャードのために、いくつかピックアップした場所へ案内をする。

長旅の後なので疲れない程度にいくつか回り、ホテルへと連れていくと一緒に泊まらないかと誘われてしまった。

「リチャード、俺はそっちの趣味はないよ」

さすがに彼も、奥さんとかわいい娘さんがいるということは知っていたけど。

念のため、笑いながら伝えると、彼からもそう言う意味はないよと笑われてしまった。

どうやら俺のためにいくつか本を持ってきてくれたようで。

アメリカ生活が長くて、今は日本の大学へ通っている俺にとても興味がある彼は、ここ何回か来日の際に本やレポートを持ってきては俺に感想を求めてきた。

今回も、彼が執筆した新作の本を持ってきてくれたようで、まだ出たばかりで日本では未発売なのだという。

ありがたく受け取り、ぱらぱらとめくると、なかなかボリュームのある本で。

彼が日本にいる間に読み切ることができるだろうか?

ちょっと不安になるほどのその本は、なかなか楽しそうで。

時間を見つけては本を読み、疑問に思った所にマークをつけ、レポートとしてまとめるようにした。

結局、ホテルに空きがなくて食後自宅へ戻った俺は、本を片手にパソコンの前にいて。

きりの良いところでレポートの下書きをし、また読んでと繰り返していた。
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