遠距離、恋愛。-二人の距離-
それでも、たまに顔を出せば知った名前がいて、それなりに会話を楽しんで。

毎日、充実して過ごしていた。

3回目の3年生が始まった春。

さすがに今年は単位を落とすわけにはいかず、去年油断したこともあり、足りない単位を取り終わるまではバイトをお休みすることにした。

会社からはどにかならないかなんて言われたけど、どうものめりこんだら他が見えなくなってしまうようで、ここはきっぱりと休んだ方がよさそうで。

ほとんどが貯蓄に回していたバイト代のおかげで、学費は心配がなかったので、今まで以上に大学で過ごす時間を増やすことができた。

夏休みに入る頃には、ほとんどの単位を取得し終わっていたけど、まだ少しだけ残っていたのもあり、バイトへの復帰は先延ばしにして。

代わりに、夏の間だけ大学で知り合った友達と旅館での住み込みのバイトなるものを経験することにした。

一緒に朝バスケットをしていた彼、堀田ヒサシの実家で、山の中にある旅館で。

有名な観光名所から少し離れていて、夏場でも夜は涼しいここで、8月だけの短期のバイトだった。

「俺、旅館でバイトなんてしたことないんだけど」

「ああ、大丈夫。コウタ英語できるだろ?こんな山の中だけど、最近外国人が多くてさ」

俺の英語力じゃ自信がなくてね、なんて笑うヒサシは英語の成績が確かよかったはず。
< 80 / 127 >

この作品をシェア

pagetop