遠距離、恋愛。-二人の距離-
実際に彼の口から聞いたことがあるわけではないので何とも言えないけど。

同じ大学3年生だけど、3回目の俺はヒサシよりも年上で。

でも、彼にとってそんなことは全く問題ないようで、仲良くなってからは敬語もないしとにかく嫌みのないやつで。

一緒にいて、お互いに気を使わずになんでもできる唯一の友達たっだ。

バスを乗り継いで付いた旅館は、俺が想像していたよりも立派で。

「・・・って、俺ここ知ってるぞ」

「え、そうなん?」

確か、観光ガイドで紹介されるような有名な老舗旅館。

「まあ、古いからなー」

泊まったことはないけど、確かアメリカで売っている日本の観光雑誌にも載っていたと思う。

バイトで外国人を案内するのに便利かと、海外で出版された日本の観光雑誌を取り寄せて目を通していた俺は、いくつかの雑誌でここの名前を見たことを覚えていて。

いつか、時間ができたら行ってみようと思っていた場所の一つだった。

どうしてヒサシから名前を聞いた時に思い出さなかったのだろうか。

「まあ、男は力仕事が多いけど、飯はうまいから」


旅館での仕事は、ヒサシの言う通り、本当に力仕事がメインで。

それでも、3食付いて温泉にまで入れるなんて、なんともありがたいバイトだった。
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