遠距離、恋愛。-二人の距離-
その中に俺やヒサシも入っていたけど、俺は旅館の仕事に関しては全くの素人で。

とにかく、あまり役に立てずにひたすら通訳に徹する形になってしまった。

「ああ、もうすげー悔しいんだけど」

休憩中、自分が何もできないことにいらいらして、思わずヒサシに愚痴をこぼしてしまった。

「はは。初めてにしてはよくやってるんじゃない?」

お茶を飲みながら、ヒサシが俺を慰めてくれるけど。

今までバイトでやってきた通訳の仕事とは全く違い、旅館での接客そのものができていない俺は、あたふたするばかりで。

それに比べて、さすが息子だけあるヒサシは、てきぱきと動いていて。

ヒサシのやることを真似して何とか一日が終わったけど、本当に疲れ果てて食事ものどを通らないほどだった。

「大丈夫か?頑張りすぎだよ」

倒れこむようにして布団にうつぶせになっていた俺に、冷たいペットボトルを持ってきてくれたヒサシ。

ありがたく受け取り、一気に飲み干すと空腹の胃がびっくりしたようで。

「うえ。いてて・・・」

「あー、お前バカ?」

あわててタオルをお湯で濡らし、絞ってから俺のおなかの上に乗せてくれた。

ほんのり温かいタオルが気持ちいいなんて。

「てか冷たいの持ってきた俺も悪いよな。ごめん」

しばらく横になっていたら落ち着いたけど。

「何か食べた方がいいよ」

いつの間にかおにぎりを作ってきてくれたようで、ありがたく頂くことにした。
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